お口の中が酸性になることで、歯は常に溶けやすい状態になります。虫歯の(C1:シーワン)第2段階は、歯の表面を覆うエナメル質が溶けている状態で、これを脱灰(だっかい)と言いますが、この段階ではあまり痛みを感じないので、そのまま放置される人は少なくありません。
しかし、歯は一度削ってしまうと元には戻らないので、出来るだけ削らずに自分の歯と一生を共にすることが理想的な歯のライフサイクルです。この段階であれば歯を削らずに治療が出来ます。
下の図は歯のライフサイクルを表しています。
左が多くの人の歯のライフサイクルで、歯が痛くなってから治療する歯の寿命を表しています。右側が予防型の歯のライフサイクルです。痛くなってから治療する人の歯は55才で二次う蝕(歯が溶けてなくなる)で抜歯、歯を失ってしまいます。一方、定期的なメンテナンスや予防歯科をしてきた人は80才でも自分の歯を維持しています。
左右の歯のライフサイクルを比較しても分かるように、予防型の治療は殆どが歯のメンテナンスで、痛くなってから治療する場合と治療内容が全く違います。つまり、痛くなる前に治療すれば、治療費、治療期間を大幅に削減することが出来るのです。
いつまでも自分の歯で美味しく食べることを目指して、定期的な予防歯科に心がけましょう。
虫歯治療の初期(COからC1)の段階では、歯を削らずに治療することが出来ます。
歯を削らず、歯垢(プラーク)やバイオフィルム(細胞が増殖してできた膜)を取り、仕上げにフッ素を塗ったり、奥歯の溝など歯ブラシの届きにくい場所ではシーラントを行います。そして、食生活や、歯みがきの改善を指導し、虫歯が進行しないようにします。
下の図は、シーラントの治療方法です。
歯には虫歯になりやすい溝があります。特に奥歯の溝は歯ブラシが届きにくいので、シーラントはその溝を塞ぎ、虫歯菌の侵入を抑えます。
歯垢(しこう)はこのサイトの説明の中でも時々出てきますね。歯垢はプラークとも言いますが、歯の表面や、歯と歯茎の境目、歯と歯の間に付着する白いネバネバしたもので、そのプラークの中には虫歯菌や歯周病菌を含むたくさんの種類の細菌がたくさん住み着いています。プラークは、歯にしっかり付着して水に溶けにくいという性質を持っているので、歯磨きなどで綺麗に落とさなければ取り除くことはできません。
バイオフィルムはプラークと同じ物質ですが、細菌が増殖してできた膜のことを言います。
シーラントは、この歯垢とバイオフィルムを取り除いてから、歯を削らずに虫歯になりやすい溝を塞いで虫歯を予防、初期の虫歯の場合は虫歯が進行しないようにします。
下の図はシーラントの効果とフッ素の働きです。
虫歯は、食事によりお口の中で酸が発生し、その酸により歯が溶けてカルシウムやリンが奪われ歯に穴が開いていきます。これを脱灰と言いますが、フッ素は酸の発生を抑制し、唾液中に含まれるカルシウムやリンを歯に戻す唾液の力を効率良くする働きもあります。
自分の歯を長持ちさせる為には、歯が萌出する頃から歯の検診を始め、定期的に予防、メンテナンスを継続することが大切です。