お口の中の常在菌の数は、1000億個以上と言われています。その中のミュータンスレンサ球菌(以下虫歯菌)という細菌は、食事に含まれる糖質からプラーク(歯垢)を作り出します。そしてプラークを歯に付着させ繁殖をして、砂糖や炭水化物などを発酵し酸を産生します。お口の中が酸性化されると、歯は少しずつ溶けていきます。
虫歯とは、虫歯菌がつくる酸により歯のカルシウムが溶ける状態のことなのです。
歯のカルシウムは自然にも失われていますが、歯は失ったカルシウムを唾液中から取り込み元に戻そうとします。歯は常にそれを繰り返しバランスを取っていますが、虫歯菌が増えるとそのバランスが崩れてしまいます。
下の図は、この様なお口の中の状態から虫歯になるメカニズムを表しています。
歯の質により、糖質、細菌が、お口の中で長く一緒になるほど虫歯が出来やすいのです。
歯の質は、歯並び、噛み合わせや唾液の質により、虫歯になりやすい人、なりにくい人がいます。
糖質は三大栄養素のひとつですが、砂糖に限らず、ごはんやパン、ビールなど、他にもさまざまな食べ物に含まれます。
糖質をもとに酸を作り出すミュータンス菌のことです。
3つの条件が重なった状態が、長く続くことにより虫歯になります。間食や歯の磨き方が影響します。
虫歯の進行状況は、C1からC4の4段階に分類されています。CはCariesの略で虫歯を意味します。最近はCariesObservationを略してCO、経過観察の段階が加わりました。
C0は、初期の虫歯ですが、歯の表面のエナメル質が少し溶け始めて白く濁って見える状態です。まだ症状もない為、気付かない人が多いですが、要観察歯で予防歯科治療により元の健康な状態に戻すことが可能です。
歯のエナメル質に出来た虫歯で、まだ小さなシミや黒い点が出来るほどの状態です。痛みやしみる事はほとんどありません。
この段階でエナメル質を再生できれば、虫歯になりにくい健康な歯がよみがえります。
C1よりも虫歯が大きくなると、エナメル質の内側の象牙質に達し、冷たいものや甘いものを食べた時に痛みが出てきます。象牙質は神経に繋がっているため、歯がしみる様になり、さらに象牙質は柔らかい組織ですので、この段階から虫歯の進行が早くなります。この時点で治療をすれば神経を取らずにすみますので、早めの診察が肝心です。
C2を放置すると象牙質よりさらに虫歯が進み、神経に達します。C3になると、何もしなくても痛みがあり、さらにそのまま長期間放置すると痛みが消えていきます。これは、徐々に神経が死んでしまった状態で、虫歯が治ったわけではありません。死んでしまった神経の根の中に細菌が入り込むと、次第に神経がなくなり、一緒に血管もなくなってしまいます。神経が失われると痛みを感じることが出来なくなり、忘れた頃には、歯茎が腫れて食事が出来なくなるといったことになってしまいますので、C3になる前に虫歯を治療することが重要です。
ほとんどの歯が溶けてしまって、歯が崩壊して根だけが残った末期症状です。C3の段階で神経が虫歯により壊死してしまっているので、痛みがなくここまで来てしまったという状態です。さらにこのまま放置すると、歯の根の先に膿がたまり再び痛みを感じるようになります。
このような場合は、ほとんど抜歯となります。残したとしても、長期予後は望めません。虫歯菌が血管を通り、他の組織に達することもありますので、一刻も早い治療をすることが重要です。