近年でも、歯が痛くなりしばらく我慢をして我慢が出来なくなってから来院される人は少なくありません。虫歯の場合、その多くは抜髄、最悪の場合は抜歯することになりますが、もっと早く来院したら歯を救うことが出来たというケースが殆どです。
なぜ、この様なケースが多いのでしょうか。
それは、日本人の歯に対する意識の低さに問題があるからです。日本は、先進国の中でも歯に対する意識が非常に低く、年を取れば入れ歯になるのが当たり前。このような認識の人はまだまだ大勢います。しかし、そんなことはないんです。歯に対する意識を変えるだけで、いつまでも自分の歯でしっかりと噛み、美味しく食べらるんです。
歯の大切さを早く認識するかしないかで、歯の将来が大きく変わって来るんです。
しばらく歯医者に来ていない人は、自分のお口の中がどんな状態なのか分かりません。お口の中を検査すると、虫歯だけで無く歯周病の進み具合、日頃のケアが正しく行われているかなどが分かります。先ずはお口の中の状態を丁寧に説明し、今の状態から最善の状態にするお話をします。
日頃から定期的に検診を行っている人は、互いにお口の中の状態を把握していますが、そうでない人は、そこから始めるのでどうしても時間がかかります。しかし、お口の中の現状を知ってもらって、必要な治療やケアについてお話することは、他の歯の寿命を延ばすためにもとても大切なことなのです。
歯科医療の技術が飛躍的に進歩していることをご存じでしょうか。
1961年に発足した国民皆保険制度は、歯科医療においては国民の虫歯をなくすということを主に目的としていました。国民誰もが安く虫歯の治療が出来るということで、当時としては画期的な施策であった事は間違いありません。しかし、保険で支払われる治療内容は30年ほど前からほとんど変わっていない為、今の保険制度は歯科医療技術の向上に伴なっていないのが現状です。つまり、国民が新技術を保険で受けられないのです。
飛躍的に歯科医の技術を向上させているのが、顕微鏡を使った治療です。目視の20倍から30倍の大きさで治療が出来る様になりました。従来のレントゲン画像と経験と勘を頼りに行う治療と、顕微鏡を使用した治療の精度の差は歴然です。
虫歯の治療については、虫歯菌を可能な限り除去する為に歯を大きく削ってきたのに対し、顕微鏡を用いた治療ではそれを最小限に抑えることが出来るようになりました。また、神経に近い所まで達した深い虫歯については、神経を守ることが非常に難しかったのですが、顕微鏡の導入により守られる確率が高くなりました。
神経が露出した場合は、抜髄や神経が入った管を治療しなければなりません。根管治療は、太さ直径1mm以下の管が無数にかつ複雑に枝分かれした歯の内部を治療しますので、高いスキルを持った歯科医でも、従来の方法では成功率が30%〜50%程度と言われています。
根管治療は歯科医療で最も難しい治療のひとつですので、顕微鏡の導入には知識と経験が求められるのです。